■本能学区のまちづくり
ゲスト:本能まちづくり委員会委員長 西嶋直和さん
西嶋さんは、染色補正40年のベテラン。染色補正とは、しみ抜きや地直しなど、京染をバックアップする染色工程上不可欠なお仕事です。西嶋さんのような染色補正技能者は、いわば「着物のお医者さん」ですね。
業界団体の役員とともに、自治連合会副会長、本能まちづくり委員会委員長などをつとめられ、地域に貢献されています。歩いて暮らせるまちづくり推進会議代表なども。本能まちづくり委員会は、第2回京都景観まちづくりコンクールで優秀賞を、歩いて暮らせるまちづくり推進会議は市長賞を受賞しました。
本能学区とは、四条堀川の北東部に位置する約1300世帯の「染めのまち」。「本能寺の変」で知られる本能寺はかつてここにありました(現在は市役所の向かいに建ちますが)。室町通りにも近く、堀川の水を活かして染色産業が発達しました。現在も染関係の職人さんが多く暮らしています。
伝統産業、染色産業の衰退とともに人口も減少しています。1990(平成2)年には本能小学校が他の4校と統合されました。しかし、近年は、染色工場跡地などにマンションが建設され、人口が増加しています。全世帯の約半数はマンション住人になりました。
本能まちづくり委員会の活動の背景は、上記の激しいまちの変化です。地域資源を活かしながら、住み続けられる活力あるまちづくりを学区住民みんなで行うため、1999(平成11)年12月、自治連合会の常設委員会として設けられ、現在まで継続的な活動を展開しています。委員会の課題は、<続く>
◇まちづくり活動のリーダー
担当:高田光雄
自立的で、個性が衝突してしまい、まちづくり活動グループの交流は難しいのです。これまでのまちづくり活動のリーダーたちの特質は、1.明確な理念と目標を提示、2.率先して活動し結果を出す行動力、3.絶対に逃げないことによる信頼。
近年まちづくり活動は変化してきました。旧来の差し迫った問題を解決しようとする活動から、自分たちが暮らす環境を自分たちで作り、育てる活動へと変化です。多様な価値観の受容し、持続可能性の重視。
新しいまちづくり活動のリーダーとは、メンバーの個性を引き出し相互につなぐ(個性的だが自分に着いてこいとは言わない)、コラボレージョンの達人、21世紀型まちづくりリーダーです。21世紀型リーダーのもつ意味は二つあり、これからのまちづくりへの課題に対応する役割が期待されます。
1.まちづくり活動同士のコラボレーション:活動グループのネットワーク化
2.次世代の活動の育成と継承:持続可能性の高いまちづくり活動の展開
西嶋さんのお話の続き...
課題は、マンションを含めた住民交流の促進、伝統産業の活性化、本能らしいまちなみづくりなど。これまで、まちづくりの事例研究をはじめ、2回の住民アンケート調査、地区計画の策定と「本能学区まちづくりのしおり」づくり、「本ものに出会える日」事業(伝統産業の工房公開など)などを通じてこれらの課題に精力的に取り組んでいます。
防犯問題に対する住民の関心が高まっています。最近の取り組みとしては、安心・安全な本能学区を目指して自主防犯委員会を設立しました。これまで行ってきた防災に加え、門灯の点灯促進や防犯パトロールなどを試み、学区ぐるみで防犯に取り組んでいます。
多様な住民の交流が進み、伝統産業を活かした生活の活性化が進めば、それが自然にまちなみににじみ出す。まちづくり活動を通じて本能らしいまちなみをつくっていきたいです。