■現状よりも安全な暮らしを〜木造住宅の耐震補強
ゲスト: 建築事務所ニュープラン 遠藤康雄さん

京都はここ数年でも京町家を活かした店が数多くにぎわうなど、歴史ある古い町並みが魅力のまちです。しかしこれは、裏を返せば、細い通りや古い建物など都市のインフラが古いまま残り、防災の観点では弱い都市とも言えます。古くなり傷んで弱くなった建物に、今よりも少しでも安全に暮らす方法を考えたいですね。
木造住宅には伝統軸組工法、在来工法、それらを組み合わせたものと工法による違いがあります。工法によって建物の特徴は、柔らかい構造固い構造となり、地盤によっては共振してしまい地震に弱い組み合わせにもなります。
地震対策では、まず耐震診断をすることから始まります。診断を普及させるため、各市町村で助成されている場合が多いのでそれぞれの市町村の役所に相談して下さい。一般耐震診断の場合、在来工法の建物の場合で自己負担2000円などで、建物の弱い箇所が凡そ分かるので、地震対策を考える目安が立てられるでしょう。診断後に具体的な耐震補強を行います。耐震改修といっても、先ず行うべき事は傷んだ箇所を直すこと。いくら補強をしても、もし柱元が腐っているままではどうしようもありませんから。<続く>
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遠藤さんのお話の続き...
よく知られている方法として、筋交い(すじかい)を弱い箇所に追加する補強がありますが、これは在来工法の建物に有効な方法で、より固める補強です。
京町家などの伝統軸組の、ねばって揺れを逃がす建物には逆効果です。伝統軸組の建物を、在来のように全て固めてしまうのなら、筋交いも良いのですが。伝統軸組の建物に部分的に追加してはいけません。筋交い部分に負荷が集中し、ある点で筋交いが弾け柱や梁などを破断、建物を倒壊させてしまいます。伝統軸組に補強する場合は、制震装置や荒壁パネルなどを用います。
本格的に補強するとなると、建物全体に及びますからコストはかなり大きなものになります。より手軽な耐震工事としては、屋根を軽くしてやることです。例えば瓦土葺き屋根の場合、土の厚みにもよりますが、車3台分ぐらいの重さが頭の上に載っているのです。瓦桟葺きやカラーベスト葺など、軽くすることで、倒壊の危険を軽減したり、倒壊までの時間、逃げる時間を確保することができます。
地震対策として大切なのは、地震の時にはどう行動するか?常日頃から家族で相談しておくことです。学校なんかでは地震がきたら机の下に逃げ込めと教えますが、阪神大震災規模の場合それではダメで、とにかく早く外に逃げた方が助かります。外でもブロック塀が倒れてきたり、隣家が崩れたりしない、安全な場所はどこか?探してください。