■自然の感覚を楽しむ
ゲスト:(株)山中油店 常務取締役 浅原孝さん
江戸後期の文政年間以来、油の専門店として二百年続く老舗。
我が国製油の始まりは、平安時代の初め、大山崎の離宮八幡宮が始まりとされています。製油には、菜種ではなく、荏胡麻が使われていて、祀りの灯火や宮中に献上される、貴重なものでした。
宮中献上などの功績から、神社仏閣の灯明の油は、全て大山崎が納めることとなり、朝廷から「荏胡麻製油の長」として独占権を認められ、油座として発展していきました。その後の信長から始まる規制改革により、大山崎の衰退と共に、新製法などが開発され、荏胡麻油から菜種油へと変わっていきました。
外国の食文化が入ってきて、食材として油が使われはじめ、大量生産が始まると、価格が下がっていき、使われる油の種類も少なくなっていきました。ここ2年ぐらいの健康意識の高まりで、全国からいろんな問い合わせがありますが、油に対する正確な知識が無くなってしまった現在では、大量摂取などの危険性も否めません。油も調味料と考えて使ってもらうと、分量も自然と分かってきます。
なぜ急に健康意識が高まったかを考えることがありますが、加工品に囲まれた生活の中で、人の身体が悲鳴を上げているのではないかと考えています。
食用だけでなく建築用の油も扱っています。天然塗料を塗った木は、合成塗料に比べくすんできますが、カラ拭きするだけで、またツヤが出てきます。触れると素材の質感が伝わってくるのも、良さのひとつです。触ってあげると答えが返ってくる、これが自然の持つ味だと考えています。こういうキャッチボールが、普段の生活の中にも、楽しみを見いだせるのではないでしょうか。
◇生活から見える環境
担当:畑正一郎
環境の意識と配慮に必要なことは、「持続していけること」ということで、今考えるべきことは、次世代が参加できる仕組みを考えるということではないでしょうか。
日本は輸入大国です。これは、食品、衣料、建材など生活に必要なもの全てにわたっています。これらを値段でなく、輸入するのにどれだけのエネルギーを消費しているかに置き換えると、欧米諸国の何十倍のエネルギーを消費して、物を調達していることが数字で出てきます。
普段の生活が、周囲にどれだけの影響を与えているかを、日々の生活で実感することは難しいです。しかし、一個人の生活が集まることにより、地域・まち・都市・地球の環境を作っていることは、間違いありません。