ゲスト:八百三 柚味噌 佐々木修子さん
1708年創業。白味噌と柚を合わせた独自の製法で、普通の味噌とは趣きを異なる物を作り上げています。戦前は精進料理屋等に下ろしていましたが、現在は対面販売が基本です。初代・八幡屋三四郎が、利休好みを味覚に改善して創作したもので、歴代皇室にも使われていました。
材料は水尾から取り寄せていますが、柚は季節物なので、お店の蔵に仕込んで貯蔵して、一年を通して味のばらつき無く提供しています。また、蔵という理想の貯蔵庫で漬け込んでおくことで、お店独自の味に仕上げています。云わば蔵が職人なのです。
柚と味噌が出会って、独特の味を持つ柚味噌が誕生したように、その使われ方も型にはまること無く、いろんな食材と出会って発展を続けています。例えば、洋菓子屋さんがシュークリームの材料として使おうと試行錯誤しておられます。食材としての可能性を引き出してもらっていると思います。
現在は対面販売を基本としているので、お客さんは観光客から馴染みのお得意さんまで幅が広いです。蔵、加工場、お店、住居と一つにまとまっているため、家内工業として家族でやっていけます。家が古いため、いろんな問題もありますが、この形でやっていきたいです。
◇蔵の役割・貯蔵・再利用
担当:畑正一
蔵は収納としてだけでなく、発酵食品などを作り上げる微生物や菌の住みかでもあり、それらが働ける理想の空間です。だいどこも通気が良く、冷んやりとした気持ちのいい空間でゆっくりと時間を重ね、漬け物などを美味しく熟成させる「小さな仕込み蔵」と言えます。今の台所は、微生物と共に発酵食品を醸し貯蔵しておく「蔵」という要素がなくなり、料理を作る清潔な「部屋」になってしまった。
現在、蔵はこれらの役目を与えられず、壊される手間も惜しまれ放置されている物が多い。食生活や防災を支えて来た蔵をもう一度、生き返らすような努力をしなければいけないと思います。